勤務する自治体ではMicrosoftのTeamsを学習ツールとして使用しています。このTeamsを通して授業の伝達や学年内での連絡、課題の回収などを行っています。ただ、情報伝達の手段以外に自由にコミュニティの場として利用している先生方は決して多くはないと考えています。私は子どもたちに自由にTeamsを使わせています。リスクもありますが、メリットも多いためどのように私が自由に使わせているか簡単に紹介できればと思います。
Teamsをもっとコミュニケーションに
勤務する学校の学級ではTeamsを活用していますが、基本的には教員からの一方的な伝達手段となっています。子どもたち相互のコミュニケーションや子どもたちが教員に連絡することはほとんどない実態です。
子どもたちはコンピュータのスキルは教員の想像以上に高いと常に考えています。年齢によってはスマートフォンのLINEやオンラインゲーム上のChatなどでコミュニケーションをとっていることが多いです。もしかすると、インターネット上のコミュニケーション力は私たち大人より高いのかもしれません。
そうなれば、Teamsでコミュニケーションを子どもたちができるようにしても、子どもたちは困難ではなく、むしろ都合が良いのではないでしょうか?
私はこのような考えの下、Teamsを自由に使わせるようにしました。
私は勤務校において3年生、4年生、6年生を受けもってきましたが、どの学年担当の時も自由にTeamsを利用させていました。もちろん学級の特徴や受けもつ子どもたちの特性にもよるかと思いますが、自由に使わせたことによるトラブルは特に発生しませんでした。
Teamsを自由に使わせるためにやったこと
ただ、Teamsを完全に自由に使わせるとっても無益なコミュニティの場となってしまっては生徒指導も大変になります。そのため、Teamsを自由に利用させるためにはいくつかのルールは私自身で作りました。
- クラスのTeamsを作る
- 連絡系統のチャネルと自由にお話するチャネルを分ける
- 投稿した内容の編集や削除はできないようにする
- 必ず管理職や学年主任等をTeamsに招待する
- タグを活用する
1つめですが、自由に使えるためのクラスTeamsを作成しました。クラスTeamsを作成する先生方はとても多いのではないでしょうか。どんな用途のクラスTeamsでもよいように思えます。
2つめはチャネルを活用しました。
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様々なチャネルを作成しました。基本的には一般チャネルを自由なコミュニティの場とし、連絡帳用、各教科の伝達用、宿題連絡用、各種委員会や当番活動用など様々なチャネルを作成しました。これにより、子どもたちは重要な情報は各チャネルに投稿されるので気兼ねなくコミュニケーションをとることができます。左は本年度担当している6年生のものであり、昨年度担当した4年生のものになります。特に4年生については学級担任制ということもあり各教科のチャネルが多くありました。
3つめは、一度投稿した内容は編集や削除をできないようにしました。これは、管理者の設定であれば設定から可能です。
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基本的には子どもたちは投稿以外できないような設定になっています。目的としては投稿した内容に責任をもたせることです。情報モラル教育にもつながると考えていますが、デジタルログは容易に消すことができません。特に不特定多数が見られるインターネット上であればなおさらです。また、投稿した内容を簡単に修正できた場合、もしけんかやいじめと思われることが起こっても確認することができなくなります。いじめを起こさせないため、投稿に責任を持たせるためです。
子どもたちにもそのような目的で修正、削除できない設定にしていることを伝えて利用するようにさせました。
4つめは、管理者や学年担任等をTeamsに招待することです。これはただ単に子どもたちへの抑止力になるだけではなく、いじめや不適切なことがあった際にすぐに誰もが共有できるようにする目的です。LINEのような見えないトラブルにならないように常に誰もが確認できるようにすることで担任自身の自衛にもなります。
5つめは、タグを活用することです。チャネルを多く作ると子どもたちへの指示や連絡が行き届かないこともあります。その時に活躍するのがタグです。全員に通知を送ることも可能ですが、管理者等を招待している関係上迷惑になりかねません。そのため、必要なタグを作成し、全員に通知したいときはタグを使ったり、子どもたちへも使うように指示しました。
実際にTeamsを自由に使わせる
このような設定の上、子どもたちへ自由なTeamsへ招待します。招待後、クラスTeamsの簡単な使い方を説明します。私は自由に投稿することや、できる限り朝など1日1回はTeamsを見ること、そして他人を傷つけるような発言はしないことを伝えます。
また、本年度の6年生にはクラスLINEでいじめや仲間はずれが発生して問題になるよりこちらを自由に使ってもらったほうがお互いメリットになることを伝え利用してもらうようにしました。
ただ、今まで受けもった子どもたちすべてに共通することは想像以上にTeamsを使わないことです。今までの学年で使ってこなかったため、どのように使ってよいのか分からない様子でした。
そのため、まずは自分が投稿することから始めます。
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どのように使うのか、簡単に示し見たらリアクションをつけるように伝えました。35人ほどの学級ですが、あまりリアクションはありませんでした。
このように発信を繰り返していくことで、ようやく子どもから投稿がみられるようになりました。
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ここまでくるともう子どもたちが投稿するようになってきました。
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最初はこのような質問が多かったのですが、伝達として使われるようになりました。
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約1か月かけると自由に投稿するようになってきました。宿題の分からないところを相談したり、地震が起こった際の連絡として使ったりと…
夏休みになればものすごい数の投稿がなされるようになってきました。
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このようになるとTeamsを通して連絡を取ることが可能になってきます。時間割や連絡事項をTeamsに掲載しても確認する子どもが多くなるのです。
Teamsを自由に使わせてみて気付いたこと
Teamsを自由に利用させて気付いたことは、どこの子どもも等しくコミュニティに入れることが分かりました。特に現実では内気でコミュニケーションをとることが苦手な子どももTeams上であれば饒舌になり和気あいあいと会話している場面が多く見られました。ネット弁慶になっていることもありました。インターネット上での居場所も必要だと感じさせられます。
今年度担当する6学年では特にTeams上で大きな問題が起こることなく終えられるような気がしています。
また、Teamsを利用する子どもが多くなると情報をすぐに伝えやすくなります。特に出張時等で学級に連絡を取りたい際にはメンションでクラスに投げかければ誰かしら反応してくれることがあります。とても便利でした。
さて、Teamsを自由に利用できるようにしたところ、年間を通してどの子どもも継続してTeamsの内容を確認していることが分かりました。この6年生のTeamsは教科のTeamsではないため、必要でなければ開く必要がありません。自由に投稿できるようにしていることで多くの子どもたちが日ごろからTeamsを利用しているのではないかと考えます。
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Teamsを自由に使わせてみて起こったトラブル
私は学習用端末が配付されてから4年間自由に子どもたちにTeamsを利用させていますが、大きなトラブルは発生していません。これは、常に担任や管理者などの先生の管理下にあるからということもあるでしょう。そのため、トラブルを防ぐために使わせないというというものはナンセンスに感じられます。意外と子どもたちは正しく自由に使うものです。
ただ、2回ほどトラブルはありました。
1つめは、喧嘩です。Teams上でけんかをしたことです。些細なことから始まったのですが、休日に悪口の言い合いがありました。幸い、すべての記録は残っているので指導上困難になることはありませんでしたが、トラブルが発生したことがありました。
2つめは、個人情報の流出です。年賀状のシーズンになると子どもたちが年賀状を書いてもらうために住所や電話番号をTeams上に公開したのです。クラスのTeamsなので不特定多数がみられる場所ではないのですが、ここは指導が必要なポイントでした。
トラブルではないのですが、大きなトラブルになる一歩手前の出来事もありました。昨年度4年生のある子どもが自分の作成したゲームのアカウントをTeamsに投稿しました。ただ、このアカウントが本名であり、顔写真も掲載していたのです。すぐにTeams経由で本人に連絡を取り削除してもらい、保護者へ連絡をしました。Teamsに投稿されなかったら誰も気付かずに…という怖い出来事でした。
Teamsは子どもたちに自由に使わせてみよう
子どもたちは意外と考えて利用しています。確かにトラブルが発生することもありますが、LINEやインターネット上といったこちらが見えない世界ではなく常に教員がみられる世界です。複雑なトラブルを防止する観点でもTeamsを自由に使わせるのがよいのではないでしょうか?
子どもたちはいつも楽しそうにコミュニケーションをとり、対面で話すことが苦手な子どもでも積極的に会話に参加しています。